「息が吸いにくい」、「何か胸の辺でつっかえた感じがする」、「人と話をしていると、時々大きく息つぎをしないと会話が続かない」などの症状を、訴える方も珍しくありません。医療機関の精密検査で、呼吸器等に特に異常が無ければ、当院では、頭蓋の問題、胸椎、そして胸郭を主に調べていきます。
縦隔(左右の胸膜腔にはさまれた胸郭中央部の胸腔をいう。ここに胸腺、心臓とその大血管、気管、食道、胸管、リンパ節、迷走神経、横隔神経、交感神経、幹神経節が含まれる)が変位を起こすと、1日に約2400回といわれる横隔膜の運動は制限され、内臓の動きも縮小されます。また横隔膜中心は上方に牽引され、ときに、食道や胃の間にある括約筋がうまく働かず、胃酸や胃の中の酵素が食道下部に逆流して、胸焼けや心臓発作のような感覚に襲われることもあります。
写真は、吸気、呼気運動の際に左右対称な肋骨の動きが回復できるよう、斜角筋や小胸筋などの肋骨を挙げる吸気筋群(inspiratory muscles)の調整と、吸気制限のある肋骨角に手をあて、外方、足方に軽く牽引しているところです。
胸郭の機能的な異常は、呼吸機能のトラブルのほかに、循環器系(特に、静脈とリンパ)、神経系(腕神経叢と肋間神経)、内臓運動、に重大な影響を与えることが多いようです。カイロプラクティックではリンパ還流がよくなることで、免疫力が高まることが期待できるため、胸郭部に対してのアプローチはもちろんのこと、下部肋骨の可動性も重視します。
一般的に、胸郭出口部といわれる第1肋骨、鎖骨、小胸筋、前・中斜角筋で囲まれた部分から発生するトラブルは、胸郭出口症候群としてよく知られています。慢性の肩こりや手のしびれ、むくみ、手指の脱力や冷え、痛みなどがあれば、カイロプラクティックでは胸郭部のトラブルを考えることがよくあります。
胸郭出口症候群は、さらに頚肋症候群骨・斜角筋症候群・肋鎖症候群・過外転症候群・中斜角筋症候群などに分類され、主要症状や整形学検査結果などにより鑑別されることが重要です。
* 上の写真でモデル着用のレオタードは、治療プロセス及び身体の動き等を分かりやすく見せるためであり、実際の治療で着用することはありません。当院では、多くのカイロ専門のオフィス同様、患者さん用のガウン(後開き)に着替えていただきます。着衣の上からでは、正確な背骨・骨盤の検査及び治療が困難となります。