腰痛を訴え医療機関を受診される方のうち、器質的な問題等の特別な所見が無いため「いわゆる腰痛症」と診断される方が、腰痛症の過半数を占めるといわれます。
このため、痛みの原因が具体的に判らず、どのような治療を受けたらよいか、日常どのような点に気をつけたらよいのかわからず困惑されて来院される方がほとんどです。「悪性腫瘍や恐い病気による腰痛は否定されたのですからよかったですね」と声をかけるのですが、当人はそれでも痛いことはかわりないので余り嬉しくなさそうで、原因がわからないのもつらいものです。
妊婦さんの腰部や殿部の痛みは、子宮ホルモンのリラキシンの影響で靭帯が弛緩した為、仙腸関節が不安定になり、骨盤の前傾増加がそれに伴うことが考えられます。これは一例ですが、実際のところ仙腸関節が機能障害をおこす原因は次のように幾つも考えられます。
足の組み方や、寝ているときの足のポジション、足関節の問題、筋の抑制など様々なケースがあるのです。
症状も骨盤の状態によって様々です。よくみられるのは 仙骨に体重の負荷が加わっても、生理的に正しい方向つまり前方に仙骨が移動しないため、身体が重力に抵抗できなくなる状態で、視診では身体の片方が下方に下がっていることがあります。
つぎに正常な歩行時では脚を交互に地面に着くたびに骨盤のツイストがみられますが、これが固定されて正常な骨盤の捻じれが消失した状態の方も、先のタイプと同様に頚肩や下肢までに筋緊張がみられます。また硬膜の緊張や縫合の動きの制限のため、頭部顔面部にまで愁訴が及ぶことも多いのです。
バイオメカニカル的な原因から生じる腰痛の中で最も激しい疼痛は、腸骨の捻じれと仙骨の側屈回旋、L4、L5の傾き又は回旋がみられる状態です。
写真は寛骨に対して仙骨が後方に僅かに変位したことにより、自動的に収縮機能をもたないため緊張した仙腸靭帯と腸腰靭帯の閾値を正常に戻しているところです。
私がまだ若かりし頃、アメリカでの解剖実習中に仙腸関節の問題面(仙骨耳状面と腸骨耳状面)の個体差に驚いたことがあります。この関節面だけは、解剖図も参考程度にしかならないようです。
* 上の写真でモデル着用のレオタードは、治療プロセス及び身体の動き等を分かりやすく見せるためであり、実際の治療で着用することはありません。当院では、多くのカイロ専門のオフィス同様、患者さん用のガウン(後開き)に着替えていただきます。着衣の上からでは、正確な背骨・骨盤の検査及び治療が困難となります。