「腕から指にかけて痛くて痛くて、痛み止めのお薬を1日に3回飲んでいる」 「牽引などの理学療法と鎮痛薬を飲んでいるが一向に改善しない。病院では頸椎の手術を勧められている」等の症状でお困りになって来院される方は実に多いです。
通院されている医療機関での治療経過が芳しくない患者さんの多くは、手術はできるだけ避けたいとの思いから、MRIなどの画像を持参され来院されます。病院では、頸部での狭窄や頸部椎間板ヘルニアに起因するといった診断名がほとんどです。しかし、私がこれまで診た患者さんの多くは上部肋骨に起因する症状が多く、疼痛または末梢の神経脱落症状が神経根または末梢神経の分布と一致しないことがよくあります。
痛みがひどい患者さんは、平均すると週に1〜2回の通院をお願いしています。治療1ヶ月を過ぎる頃には、痛みはかなり改善される方が多いです。脊柱管での狭窄が問題ないとすれば、どのような機序で痛みを引き起こすか、またどのような理由で痛みが軽減されるのかを具体的に模型や図譜を使って説明しています。
別の視点から、手のしびれ、だるさ、むくみ、冷感、脱力などを引き起こす可能性のある「胸郭出口症候群」について考えてみます。@前斜角筋と中斜角筋の間、A鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙、B小胸筋の下、その絞扼部位によって、斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群(過外転症候群)を総称して胸郭出口症候群と言います。
上肢のだるさ、むくみ等の症状がみられる場合は、鎖骨下動・静脈圧迫、上腕神経叢圧迫が考えられます。また、肩こり、頸・肩部痛、手指のしびれ、手の握力低下や脱力等の症状がみられる場合にも、胸郭出口症候群での狭窄部位では、上腕神経叢圧迫が考えられます。
手指の冷感、蒼白、痛み等の症状がみられる場合は、鎖骨下動脈圧迫による上肢の血行不良が疑われます。鎖骨下静脈が圧迫されると、静脈血の戻りが悪くなることから青紫色になることがあります。
発生機序は不明とされることが多いようですが、私がこれまで臨床で診てきた限りでは、特定の姿勢をはじめとした生活習慣が大いに影響していることを確認しています。