脊椎と四肢の関節に、正常な関節運動があるかどうか調べます。
正常な関節運動とは、いったいどのような運動のことを指すのか、お判りになりづらいでしょうが、次のようにしていただければイメージがつかめると思います。
例えば、手の指の関節は、意識して指を動かそうとすると、曲げたり伸ばしたり2つの方向の動きしか出来ません。しかし、指先を片方の手で挟んでやさしく左右にまわしてみて下さい。僅かに指先の関節が回旋するのがお判りいただけるでしょう。また左右・上下にも僅かな動きを確認できるはずです。
これを正常な関節運動、略して関節の遊び(joint play)と呼びます。この関節の遊びが正常であると、筋肉は自由に動くことが出来るのです。日常生活で支障なく体を動かせるのは、関節に少し融通がきくようにできているからです。
ぐらぐらした大きすぎる動き(可動性亢進)や、かたい制限された動き(可動性減少)、遊びの消失(loss of joint play)などの関節の機能障害(joint dysfunction)が存在すると、動作の際に痛みを感じたり、特定の部位にこわばった感じなど、身体になんらかの不調を覚えます。
モーションパルぺーション(motion palpation)は、脊椎、四肢の関節が、正常な可動範囲があるかどうかを調べる検査法で、実にいろいろな情報を我々に与えてくれます。関節の可動性の減少(fixation)あれば、これは筋によるものか関節自体の制限によるかは、動きの質がそれぞれ異なるため容易に鑑別できます。
頚椎の真ん中辺りで可動性が大きくてグラグラした状態では、上部胸椎や胸郭の上部で可動性の制限が検出されることがよくあります。つまりこれらの関節の正常運動が少ない分を、首の骨の関節が代償しているのです。(自分で首を鳴らしている方は別ですが...今すぐ止めましょう)
以前に、京都商工会議所でお招きを受けまして3時間程カイロプラクティックの講演をさせていただいたときのことです。大胆にも居並ぶトップの方々の前で、「首を動かしたりする運動は、皆様が普段されている体操から省いてください」とお話したことがありました。私自身が日々の臨床で、多くの方に頚椎の関節の可動性が大きすぎるのを、このモーションパルぺーションによって確認していたからです。
写真は、肩鎖関節の可動性を調べています。異常な動きがあれば、肩関節の運動がスムースに行えなかったり、時には疼痛を感じたりします。そして、周辺の軟部組織に循環障害など少なからず影響を与えることになります。
* 上の写真でモデル着用のレオタードは、治療プロセス及び身体の動き等を分かりやすく見せるためであり、実際の治療で着用することはありません。当院では、多くのカイロ専門のオフィス同様、患者さん用のガウン(後開き)に着替えていただきます。着衣の上からでは、正確な背骨・骨盤の検査及び治療が困難となります。