私が初めて“カイロプラクティック”という言葉を聞いたのは今から5、6年前でした。友人が肩や腰などを痛めていて、カイロプラクティックへ行ったら良くなったというのを聞いたときです。「接骨院でもなく、整体治療でもないけれど、そこに行けば肩こりなどが良くなるよ。」と言ってくれたのですが、「京都だし、遠いし、時間もないし。カイロプラクティック? 何それ?」って感じで、全然気にしていなかったのです。
私の肩こりは小学生の頃からあり、中学・高校と歳を重ねれば重ねるほどひどくなりました。特に絵を描いているので、その肩のこりようはただものではありませんでした。肩をほぐせば直るという常識的なものではなく、父親や主人に力いっぱい体重をのせてもんでもらってもビクともせず、「もっと力を入れて真面目にもんでほしい。」と言った時なんかは、父親や主人はヘトヘト状態でした。その恐ろしい肩こりというのは、最初は肩だけのこりなのが、そのうち首・背筋に進み、内臓に達してしまうとめまいを起こし、動けなくなったなあと思ったらもうあとは吐くしかない、というものでした。大学生の時が一番ひどく、定期的にフルコースでやってきたときなんかは、「肩こりで死んでしまうのではないか。」と思ったくらいです。(本当に)
それで、「これではいけない。なんとかしなくては!」と決心を固めた時に、友人から改めて「カイロプラクティックはいいよ。」と勧められたのです。この際、遠いなんていっていられないので、バイトをしながらも毎週カイロプラクティックに通いました。
最初は不安です。まず、普通のマンションの様な部屋に入るのに、ブザーを押して了解を得てから入らなければならないというところから、ドキドキものです。どうもこの時は中国や東南アジアの一室の様な怪しげな雰囲気が漂っているのでは?とか、カイロプラクティックという名前からどうしてもエジプトのカイロを想像してしまって、先生は古代のマッサージ師のような人ではないか...とか、友人に聞いているにもかかわらず、勝手に豊かな想像をしていました。
この私のバカバカしい想像とは全然違い、実際は普通の治療院という感じで、先生も優しい方 で、アシスタントをいしている(こういう表現は正しいのかどうかわかりませんが)大下さんもしっかりした感じのいい方で安心しました。
治療は問診から始まり、身体全体の触診へと移り、肩こりの原因はどこからくるのかを調べてくださいました。その結果、内臓から来る肩こりと心理的な影響から来る肩こり、そして股関節が悪いため体幹のバランスを崩してくる肩こりがある、といわれました。そして、「むしろ肩こりよりももっと深刻なのは、股関節の方ですね。」と言われたときはびっくりしました。
幼少の頃、脱臼が原因で股関節を痛めてしまいました。両親は当時の医療でできるだけのことはしてくれたのですが完治せず、あとはリハビリのようなもので、なんとかするしかないという状態でした。しかし、まだ小さすぎて痛いことはやりたくない、といってなかなか良くならず、そのまま大きくなってしまいました。それでも、若いときはそんなことはあまり気にしていなかったのですが、次第に歩きにくくなり、足の長さも違ってきたので、急いで整形外科でみてもらいました。レントゲンで見る限りでは、骨の長さは0.5ミリ程度しか違いがなく、ほとんど歩行には影響はないということでした。そして、あまり激しい運動や重いものを持つことは、足に負担をかけるので、止めるようにしたほうがいいと言われ、股関節を完治させる方法は未だにないということでした。手術をして人工の骨を入れても、それは10年ほどしかもたず、また手術をしなければならないので、歩けるうちはできるだけ手術は避けた方がいいと整形外科の先生はおっしゃったので、私も「現状維持が精一杯なのかな。」と思っていました。
ところが、あの恐ろしい肩こりより深刻なのは股関節と言われてしまったのです。確かに歩き方が悪いのと、あぐらも出来ませんし、横に坐わるのも左側しかできず、足を持ち上げる高さが左右違うので、姿勢がどうしても悪くなります。これも原因だろうとは思っていたのですが、こうはっきりと言われてしまうと、「あーあ、やっぱり...」という感じでした。
しかし、先生は「あなたの股関節はまだいい方ですよ。もっとひどい人はたくさんいます。まだ間に合いますから時間はかかるけれども、今のうちに治療してがんばれば、大丈夫ですよ。」とおっしゃってくださいました。「それはがんばらねば!」と思い、それから毎週2回の治療が約1年間続きました。
先生の説明によれば、関節をとりまいている筋肉が固くなり後ろに引っ張られるために、足の長さが違ってしまうということでした。放っておくとドンドン固くなり、足が自由に動かなくなるので、もっと長さが違って、歩く時のバランスがちぐはぐになっていくそうです。
はじめのうちは触られるだけで痛かったのですが、それでも回数を重ねていくうちに、そんなに痛みも次第に解消され、先生にいろんな事を質問する余裕もでてきました。この時肩こりは、ようやく普通の人並になっていました。肩がこったからといって、もんではいけないという事をカイロプラクティックにこなかったらきっと一生肩をもんでもらっていたでしょうし、変な肩もみ機を何十万も出して買っていたかもしれません。
その他、扁平足のことやカイロプラクティックの大学について、外反母指と土踏まずや靴との関係、正しい歩き方、顎の歪み、髪の毛のことなどなど、その時疑問に思ったことを次から次へと質問していましたので、いろんな事を知ることができました。
また、先生もいろんな事に好奇心旺盛な方なので「こういうのはどうですか?」と勧めてみると、「どれどれ」といった感じで興味を持ってくださいます。先生の反応を見ることも結構楽しいものです。もっとも、先生からの情報の方がはるかに多く、健康問題、食害問題、化粧品に関することなど、さまざまな事を教えていただき、それに関心を持つことができます。そうです、ただ治療をするだけではないのです。私はこの治療ももちろんですが、治療以外の先生や大下さんとの会話も充分知識の栄養になったような気がします。
こういう会話は、たぶん病院ではなかなか難しい事だと思います。先生の説明にしても、わかりやすさでは断然カイロプラクティックの方が上です。それは、外科や整形外科ではどうしても一部分を重視してしまいがちで、全体を見ようとする姿勢が少ないからではないか、と私は思うのです。触診が非常に少ないですよね。この触診というのは、昔ながらの古い治療方法のように思いがちですが、実はレントゲンをとる以上のことがわかるのではないかと思います。それは医者の豊富な経験からです。機械に頼りすぎる今の医学をもう一度見直して、医者の経験と患者との会話を大切にした東洋的な医学も取り入れた方が、より効果的な治療ができるのではないでしょうか。それに近い治療をしているのが、カイロプラクティックではないかと思うのです。
先生の治療は、とても正確です。主人もお世話になっているのですが、何が原因で痛くなっているのかがすぐわかり、それに適した治療なので、あっという間に直ってしまいます。私の股関節の方も、歩き方や普段の足の体操などを続けていくうちに、次第に良くなり、今では1ヶ月に2回の治療でよくなりました。内臓もだいぶ良くなり、肩こりの方はほぼ普通になりました。
今、カイロプラクティックがとても増えています。しかし、怪しいところもまだまだ多いのが実情だと思います。間違った知識でカイロプラクティックを理解している人も多いのです。先生はこんな間違ったカイロプラクティックに対する意識を変えようと、カイロプラクティック専門の大学の設立に力を注いでいらっしゃいます。是非、先生のような的確な治療ができる方がたくさん誕生することを期待しています。
また、先生は腰が悪いのですから、あまり無理をなさらないようにしていただきたいです。先生が倒れたら、私たちはとても困りますから。いつまでも、優しく面白い先生でいていただきたいと思います。
先生のコメント:大阪市内からホント真面目に通院していただきました。人間的にも素晴らしい方で会話のなかで多くのことを私も学ばさせて頂きました。さて聞きなれない内蔵運動ですが、多くの腹部臓器が横隔膜に伴って上下運動(1日に約24000回)することから、胸郭下部の呼吸に伴う動き、振幅の大きさが大事になってきます。人間の身体の多くは水分であるため、横隔膜と骨盤隔膜はいわばその水の流れを潤滑にするピストンの働きをしているとも言えるでしょう。決して胸部と腹部を分けている膜という単純なものではないようです。その為、胸郭下部や骨盤が理想的な位置であるかどうか、また正常な関節運動があるかどうかで、例えば食物の「消化」・「吸収能力」にも大きな悪影響を及ぼすと考えられます。となると栄養学的に見れば次に挙げる肩こりと関係する栄養素も吸収されにくくなると考えられます。ビタミンB1(乳酸の発生を抑制)・ビタミンE(血液循環を良くする)・マグネシウム(筋の緊張を緩和)・マンガン(組織を柔軟にする)などです。内蔵の動きが悪くても吸収という点で問題ですが、内蔵の動きがよくても食事で栄養素がしっかりと摂れていないといけません。身体の状態と摂取のバランスが大事です。